絶対様
あたしはまっすぐに美緒を見つめた。


そして両手で美緒の右手を包み込む。


少しでも美緒の手が温まるように少しだけこすった。


「あたしは……あたしの願いは……」


一瞬だけ、美緒と視線があった気がして言葉を切った。


しかし、美緒はすぐに視線を動かす。


気のせいだったようで、小さく息を吐き出した。


「あたしの願いは……幸せになりたい」


少しの沈黙の後、咲たちの笑い声が聞こえてきた。


あたしは唇を引き結び、美緒から手を離した。


あたしの願いは幸せになること。


咲の大崎くんへの思いも、真里菜のお金への執着も、光の外見のコンプレックスも。


全部ひっくるめて、結局は幸せになるということで通じていると思う。


だからあたしは最初から幸せになりたいと願ったのだ。


3人はあたしを置いて笑いながら廃墟を出て行った。


あたしはその場にとどまり、膝をついたままで美緒を見つめる。


「あたしまで願い事をしちゃって、ごめんね」


そう呟いて、にじみ出てくる涙を我慢することができなかったのだった。
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