恋愛アレルギー
公園をぐるっと囲むように植えられている桜の木はすでに葉桜になっていた。


それが木陰をつくり、心地いい風もふいている。


しかしあたしは緊張してしまい、なかなか本題に入ることができなかった。


ずっと足元を見つめて、とりとめもない会話をするばかりだ。


そうして10分ほど経過したとき、船見くんが空を見上げた。


つられて見上げてみると、頭上には雲がかかっている。


「もしかしたら雨になるかもしれないね。そろそろ帰ろうか」


船見くんはそう言って立ち上がる。


「あ、あのっ!」


あたしは咄嗟に声を上げて、船見くんの手を掴んでいた。


行かないで。


まだ、大事なことを伝えられていない。


今言わないと、きっと後悔することになる。


「なに?」


「あの、あたしっ……」


そこまで言ったときだった。


ジャリッと足音がしてあたしと船見くんは振り向いた。


公園の入り口に見知った顔の人物が立っていて、あたしの思考回路は真っ白になった。
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