恋愛アレルギー
咲子は容赦なくドアを開けて、教室内に踏み込んだ。


研司は教室の中央あたりの席で友人たちと談笑していて、その中にズカズカと踏み込んでいく。


怒りで頭に血が上っているのか、咲子にひるむようすは少しもなかった。


「ちょっとあんた。自分がなにしたかわかってんの!」


突然怒鳴られた研司は目を丸くして咲子を見て、それからあたしに視線をやると納得した表情になった。


「俺、なんか悪いことでも言ったか?」


そう聞かれてあたしは視線をそらせてしまった。


変わりに咲子が「悪いことしか言ってないと思うけど、そんなことにも気がつけないの?」と、文句を言う。


「ちょっと、咲子」


慌てて咲子の腕を掴むが、咲子はやはりひるまない。


「もしかして昨日のことか? 悪いけど俺、怒られるようなことはしてないから。相手の男にも早く気がつかせてやったほうがいいんだよ」


そのセリフにあたしの胸はチクリと痛む。


「なーんにも知らないままこいつと付き合うほうが、よほどかわいそうだろ」


かわいそう……。


その言葉に咲子がキレた。


顔を真っ赤にして研司に掴みかかろうとする。
< 111 / 136 >

この作品をシェア

pagetop