恋愛アレルギー
上の空
教室で無事にプリントを配り終えたあたしは自分の席に座ったまま上の空だった。


さっきから咲子が話しかけてきているけれど、会話の内容の半分も聞いていなかった。


「ねぇ、聞いてる?」


怪訝そうな表情で聞かれて我に返り、「き、聞いてるよ」と、慌てて返事をした。


「嘘。全然聞いてなかったでしょう? ずっと船見くんのこと見てたし」


咲子に指摘されて「な、なんで!?」と、声がひっくり返ってしまった。


自分ではそんなに意識して見ているつもりじゃなかったのに、咲子にはバレバレだったようだ。


「好きなんだ?」


声を潜めて聞いてくる咲子にあたしは顔を背けた。


「別に、好きとかじゃないし……」


「だけどカッコイイよね?」


「まぁ、このクラスの中ではカッコイイ方かもしれないね」


「それに、助け舟を出してくれたり、プリントを拾ってくれたり、優しいもんね」


「う、うん。それもあるね」


「そんな男子を好きにならないわけがないよねぇ?」


「そりゃあそうだよね」


と、うなづいてハッと息を飲んで咲子を見た。
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