恋愛アレルギー
☆☆☆

中学に入って3日目。


昇降口で靴を履き替えていると「おはよう」と、後ろから声をかけられた。
耳心地のいい声。


しかし聞きなれた咲子の声じゃなくて、あたしは振り向いた。


「え、あ、お、おはよう!」


そこに立っていた船見くんに慌てて挨拶をするが、一瞬にして体中に汗が噴出した。


「顔が赤いけど、体調でも悪いの?」


船見くんは靴をはきかえながら心配そうな顔をこちらへ向ける。


あたしは自分の顔を両手で包み込んだ。


今あたしの顔が真っ赤になっているのは、船見くんに声をかけられたからに違いない。


しかし、それを本人に説明することはできなかった。


「だ、大丈夫だよ。ちょっと熱いだけ」


「それならいいけど」


船見くんがホッとしたように微笑む。


朝から心臓は早鐘を打ち始める。


けれどこれって、船見くんと距離を縮めるチャンスじゃない?


なんでもいいから会話をして、一緒にB組まで行けばいい。


「あ、あの」


声をかけたそのときだった。


「おーい、船見!」
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