恋愛アレルギー
「日下部さん、どうかしら?」


先生に優しい声にハッとして顔を上げる。


いつの間にか黒板にあたしの名前が書かれていて、下に正の文字の三本が書かれた状態になっていた。


「やればいいじゃん」


それは3人組の1人からの言葉だった。


「そうだよ、本好きでしょ」


「黙ってないで答えなよ」


言われれば言われるほど、言葉が喉に詰まってしまう。


こういう風に押し付けられ、バカにされたような状態で引き受けたくはなかった。


だけど、それを言葉にする勇気がない。


あたしは助けを求めるように咲子を見た。


咲子は心配そうな顔をあたしへ向けている。


咲子がなにか発言しようと右手を上げたときだった。


咲子の前の席の男子が立ち上がり「あの」と、口を開いたのだ。


「こういう雰囲気はよくないと思うけど」


背が高く、整った顔立ちをした男子生徒だった。

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