恋愛アレルギー
その人は真っ直ぐに先生を見つめて言う。


「その、日下部さんだっけ? 困ってるじゃん」


「別に困ってなんかないでしょ。本が好きなんだから」


3人組は聞く耳を持たない。


「はいはい、みんな席に座って。船見くんも」


船見くんと呼ばれた彼はしぶしぶ席に座った。


その表情は険しくて、今の状況を納得できていないのがわかった。


「それじゃ他のみんなからの推薦を聞きます。他にはいませんか?」


先生の問いかけに返事をする生徒はいなかった。


すでに3票も入っているあたしがいるから、わざわざ推薦をする必要はないからだ。


「じゃあ、日下部さん。本が好きっていうのは本当?」


突然の先生からの問いかけにあたしは咄嗟に「はい」と返事をしてしまっていた。


いいえと嘘をつけばよかったのに、結局これが決定打になってしまった。


「それなら、図書委員は日下部さんでいいですね?」


そんな質問に否定する生徒なんているはずがない。


「問題ありませぇん!」


「賛成!」


3人組の笑い声が教室後方から聞こえてきて、あたしはまたうつむいてしまったのだった。
< 9 / 136 >

この作品をシェア

pagetop