ドライブスルー彼氏
「もしかして、松原か?」


名前を呼ばれてパッと笑顔になった。


覚えていてくれたんだ!


「うん」


コクリとうなづくと靖くんは驚いた様子で目を丸くした。


「久しぶりだな! 驚いたよ」


「あたしも……。まさか、靖くんがこんなところにいるなんて」


あたしは靖くんの後方にある小屋へ視線を向けた。


すると靖くんは眉間にシワを寄せて頭をかいた。


「あぁ……」


さっきまでの笑顔が消えて、暗い雰囲気が影を落とす。


「どうしたの?」


「こんな場所で女を待ってるなんて、最低だろ?」


「え?」


そんな風に思ったことは1度もなくて、あたしは驚いてしまった。


靖くんは自嘲気味な笑みを浮かべている。


なにか事情がありそうだ。


「歩きながら、少し話さない?」


「あぁ」


あたしたちは暗い道を歩き始めた。
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