ドライブスルー彼氏
肌に当たる風が少し冷たい。


「靖くんは彼女を作るためにドライブスルー彼氏にいたんじゃないの?」


靖くんの言い方を思い返すと、単純な理由ではなさそうだった。


「違うよ。俺はその……」


途中で口ごもり、うつむいてしまう。


簡単に説明できることではないようで、あたしは自転車を押しながらゆっくりと歩いた。


無理矢理聞き出すことはできない。


「待っていたんだ」


「え?」


「お金を持っていそうな女の人を」


靖くんの言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


「それって……」


「援助交際っていうのかな。女が男を買うほうの。俺、そこそこ見た目もいいって思ってるし、誰か買ってくれるかなって思って」


早口になる靖くんにあたしは返事ができず、思わず立ち止まってしまっていた。


靖くんが援助交際?


どうして?


そんな疑問ばかりが浮かんでくる。
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