ドライブスルー彼氏
次の瞬間靖くんがナイフを振り下ろしていた。


無抵抗な明久くんが咄嗟に両腕手自分の顔をかばった。


その腕にナイフが突き刺さるのを見て、あたしは悲鳴が喉の奥に引っかかった。


靖くんは笑みを浮かべたままナイフを引き抜く。


明久くんの腕から鮮血がほとばしった。


「ははっ! あははははは!」


その血を見ておかしそうに笑い始めた靖くんに、あたしは血の気が引いていくのを感じていた。


その時、明久くんと視線がぶつかった。


出血して青ざめているのに「里奈ちゃん、逃げろ!」と、叫んでいる。


そうだ、早く逃げなきゃ。


警察に連絡しなきゃ!


そう思うのに、体は言うことをきかない。


目の前の光景が信じられなくて、動くことができないままだ。


「おいお前ら! 初めて人を刺しだぜ!」


笑いながら靖くんが言った。


お前らって……?


疑問が浮かんできた次の瞬間、木の陰が遊具の影から見知らぬ男女が現れたのだ。


あたしは息を飲み、こちらへ近づいてくる彼らを見つめる。
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