ドライブスルー彼氏
名前はパネルには書かれていない。


彼が出てきてくれたときに自己紹介をするんだっけ。


あたしは琴葉から教わったことを反復しながら、心臓が更に早く打ち始めていることに気がついた。


緊張で手に汗が出てきている。


あたしはいちどズボンで手の平をぬぐって、大きく息を吸い込んだ。


大丈夫。


付き合うことができなくたって、友達になれるかもしれない。


それに、別に悪いことをしてるわけじゃない。


ちゃんとお金を払って、説明どおりのことをしているだけ。


付き合うことができるかもなんて、そんなことまでは考えない。


だからきっと大丈夫……!


あたしは思い切って、パネルのボタンを押したのだった。
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