ドライブスルー彼氏
しかし、返却レバーを押して見てもお金は一向に戻ってくる気配がない。


いよいよ泣きそうになって「なんなのよもう!」と文句を言う。


これから、こんな真っ暗な中ひとりで家まで帰らないといけない。


そう思うと全身から力が抜けていく気分だった。


琴葉はきっとドライブスルー彼氏の都市伝説を知ってここへ来たのだろう。


そして見事に騙された。


だからあたしにも同じような経験をさせてやろうと企んだに違いない。


あたしは唇をかみ締めた。


あたしはまんまと騙されてここに来てしまったんだ。


そう思うと、途端に早く帰らなければと思えてきた。


万が一、こんなところにいるのを誰かに見られたら、恥ずかしくて明日から学校に行くことができなくなってしまう。


さっさと帰ろう。


そう思ってわきに止めていて自転車に近づいて時だった。


ガタンッと小さな音がしてあたしの心臓は飛び跳ねた。


振り返って音がしたほうを確認してみると、小屋のドアが開いているのがわかった。


あたしは目を見開いて暗闇の中ゆっくりと開いていくドアを凝視する。


一体誰が……?


緊張で心臓が張り裂けてしまいそうになったとき、1人の男が小屋から出てきた。
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