SNSストーカー
裕也が息を飲んで動きを止める。


男がニヤついた笑みを浮かべてこちらを見た。


「嘘だろ」


絶望の声を漏らす裕也に男の笑い声がかぶさる。


「さぁ、どうする? そのナイフで俺を刺すか? それでもいいぞ? その代わり、俺はこいつの首を掻っ切る。絶対に死ねるように奥深くまでナイフを入れる。お前は俺を殺すことができるか?」


男に聞かれて裕也は押し黙ってしまった。


人を殺すなんてこと、できるわけがない。


この男は狂っているから、人を殺すことも簡単なのかもしれない。


裕也は肩で呼吸をしながら男から遠ざかった。


「あいつは狂ってる。心のことを本気で殺す」


「じゃあ、どうすれば」


逃げることも、警察に通報する隙もない。


このままじゃこの男の思う壺だ。


「仕方ない」


裕也はそう言うと、ナイフをあたしに握らせた。


「ちょっと裕也!?」


咄嗟に手放そうとしたが、あたしの手の上から裕也の手がかぶさってきた。
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