SNSストーカー
☆☆☆

みんなも来る。


そんなの嘘だった。


本当は俺以外誰もいない。


夜9時にもなるとあたりは暗くて校舎内には誰の気配も感じられなかった。


少し待っていると、懐中電灯の光がこちらへ近づいてくるのが見えた。


『こんばんは』


声をかけると彼女は警戒した表情を俺に向けた。


優等生な彼女が本当に家に抜け出してこられるとは思っていなかった。


彼女は周囲を見回して『誰もいないじゃない』と、腕組みをする。


『みんなは裏にいるんだよ』


俺はそう言って、彼女の前を歩き出した。


移動場所は校舎裏だ。


そこには使われなくなった古い井戸があって、昼間の間に重たい石の蓋を少しずらしておいたのだ。


細身の彼女が入れるくらいのスペースだ。


『ちょっと、誰もどこにもいないじゃない』


校舎裏に来て彼女は立ち止まった。


警戒心をむき出しにして、俺から距離をとっている。


もう少し近づいてくれないと、彼女を井戸に突き落とすことができない。


『きっと、先に行っちゃったんだ。俺はひとりで君が来るのを待っていたんだよ』


『嘘つき! みんながあたしを置いていくわけないじゃん!』


彼女は自分の立場をしっかりと理解していた。
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