SNSストーカー
反撃~夏美サイド~
背中に壁がぶつかって逃げ道がなくなってしまった。


背中に汗が流れていき、恐怖のために声を上げることもできない状態だ。


目の前にあの男がいる。


自分が好かれていると思いこみ、気が狂ってしまった男がいる。


「ねぇなっちゃん。これから俺たちは2人だけの世界に行くんだよ? 俺たち以外の人間はみんな下等な生き物だ。そんな生き物たちから開放されるんだよ」


男があたしへ手を差し伸べる。


急に饒舌になったのは、自分の勝ちが見えているからか。


じりじりと距離を縮めてくる男からは汗のすっぱい匂いや、カビくささ、それに水臭い臭いも漂ってきていた。


きっと何日もお風呂に入らず、洗濯もしていないのだろう。


いろいろな不快臭がまとわりついていて、吐き気を感じた。


「なっちゃん。さぁ、俺の手を取って」


その手もアカまみれで黒ずんでいる。


こんな状況で裕也が戻ってきたら、この男は本当に裕也を殺しかねない。


そうなったら、終わりだ。
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