SNSストーカー
あたしはゴクリと唾を飲み込んで、男を見た。


濁った瞳には一体なにが見えているんだろう。


どんな生活をしていれば、こんな風になってしまうんだろう。


こんな男の手を握るなんて死んでも嫌だった。


今だって吐き気がすごい。


だけど……裕也が死んでしまうほうが、もっとずっと嫌だった。


ここであたしが頑張らないと、きっとやられてしまう。


だから……あたしは男へ向けて手を伸ばしたのだ。


アカまみれの手を掴むと全身に鳥肌が立った。


その瞬間男が微笑み、あたしの手を強く握り返してきた。


笑え。


笑え!!


自分を叱咤して、無理矢理笑顔を作った。


その顔は引きつっていたはずだけれど、男は気がつかない。


「やっと、気がついてくれたんだね。俺が正しいってことに」
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