政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
1.夫婦になっても片想い
就寝前の日課である、読書を終えた。
寝室の電気を消し、一瞬真っ暗になる代わりにベッドのランプを点ける。
サイドチェストに置かれた、先程まで読んでいた洋書がオレンジの光に照らされ、私は横になり、目を閉じる。
わずかに肌寒い、。十一月。
お気に入りのナイトウェアのワンピースが、綺麗に整えた就寝前の体に肌触りよく擦れて心地よい。
耳をすませると、迫る足音とともに、自分の心臓の鼓動も大きくなっているのがわかった。
もうすぐ来る。
いつもこの時間になると、夫の夏樹が、私の部屋を訪ねてくるのだ。
ガチャ、と寝室の扉が音を立てた。
私は身を硬くする。
「桃香」
背を向けている方から聞こえる夏樹の声は、低くハスキーで、色っぽい。
私は動かず、返事もせずに、息を潜めている。
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