政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「こっち来い。どうした」
一瞬抱きしめられ、離れながら顔にかかる髪を耳にかけられた。
さっきから私が手に持っている紙の袋に気づいた夏樹は、それを下から支えてくれる。
「なに、これ?」
「うん……あの……私……私……」
「うん。なに。聞くよ」
「私……妊娠してる」
私に触れている夏樹の手から、力が抜けていくのがわかった。
どんな反応をするだろう。なんて言うだろう。伝えてからふいに不安になり、夏樹の顔が見えないように下げていた視線を、彼へと戻していく。
「……マジで?」
──えっ。
彼は初めて見るくらい、まるで子どものような、あどけない表情をこちらへ向けていた。
気持ちを言われなくとも、綻んだ彼のうれしさが伝わってくる。
予想外すぎて、こちらも眉の力が抜けていく。
「う、うん……」
私は袋から、陽性を示すスティックを取り出して見せた。
彼は私の手ごと引き寄せて、陽性の線が出ているのを食い入るように確認している。
「マジじゃん!」
「うん……病院にも行くけど、間違いないと思う」
「えっ、ヤバいなこれ、めちゃくちゃうれしい」