政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
ぴちゃぴちゃと湿った音が響く。
私は夏樹としかキスをしたことがないけど、夏樹のキスはすごい。余裕ぶって応えたいのに、頭がポーッとして、されるがままこちらの舌まで絡めとられる。
「ん……んんっ……」
脚を割られ、夏樹の体が押し入ってくる。
胸に三つ付いている小さなボタンを外されて素肌が露になると、逃げる前に彼に揉みしだかれる。
「ま、待って……」
何度しても恥ずかしくて体を捻ってみるが、夏樹の力強い腕は逃がすまいと私の体を開く。
「桃香っ……」
余裕のない吐息とともに名前を呼ばれると、そこからはもう、子作りと称した夏樹の情熱的な行為が始まる。
「あっ……ああっ……や、夏樹っ……」
「逃げんなっ……桃香。こんだけ濡らしといて」
抱き合って、口づけ合って、快感の波に目を閉じる。
今夜が何度目か、おそらくどちらにもわからない。
ただ私はこうしている間だけ、夏樹と心まで繋がっているように錯覚できる。
快感に歪む彼の顔に、私の胸はキュンとした疼きと、切ない痛みが走る。
愛のない触れ合いを終えると決まって悲しみが押し寄せるのに、私は、夏樹と体を重ねることをやめられない──。