政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

夏樹の大きな手が私の後頭部を押さえ、噛みつかれるキスが始まる。彼の言う幸せとは少し違うかもしれないが、胸がいっぱいで抗えない。これも彼の夫としての務めなのだろうか。

やがて私の足がもつれてきて、夏樹の手がグッと腰を引き寄せて支えてくれる。

「……ん? 桃香、ちょっと太ったか」

「んんっ」

私はキスが逆流したかのごとくむせこみ、感じていた甘さが一気に焦りへと変わった。夏樹の胸板から離れ、絡まる腕から逃れる。
太ったことを簡単に気付かれた。たった三キロ増えただけで気付くなんて、どうしてこんなに鋭いの。

「ふ、太ってないっ!」

「ハッハッハ。なに焦ってんだよ」

向こうのケロッとした笑顔に引き換え、私はまったくうれしくない恥ずかしさに支配されていく。
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