政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
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桃香のいなくなったリビングに居続ける意味はなく、俺は自室に戻り、スーツをクローゼットの中にしまった。
黒のTシャツとパンツのラフな私服に着替え、ベッドに仰向けに寝転がる。
白い天井をぼんやり見つめてなにも考えないようにしたが、壁に掛かっている時計の音が苛立ちを気分を増長させていった。
「……あー! ちくしょう!」
足で反動をつけて体を起こし、頭を掻いて鬱憤を晴らそうと試みる。膝に腕を置いて息を整えても、先ほどの桃香の態度が頭から離れない。
「頭おかしいだろ、アイツ……」
結婚して、四か月。俺は未だに、桃香のことが理解できない。
親の決めた許嫁? それで結婚して、子作りまでしたっていうのか? あり得ない。
好きでもない奴と結婚するかよ。普通はしない。少なくとも、俺はできない。
親が勝手に決めて喜んでいるからという理由でここまでするなんて、アイツはどうかしてる。