政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
やけに心地よく感じる風が歩道に吹いたが、俺はそれを受けながら額に汗がひと筋流れていく。
熱血? 負けず嫌い?
たしかにそういう部分はあるかもしれないが、それは格好悪いから敢えて周囲には伏せていて、桃香にしか見せてない俺だ。
努力してるって、そんな褒め言葉は俺には言ったことないくせに。
ていうか、なんだよ、それが好きって。
なんで俺も、こんなにドキドキしているんだ。
周囲には見せていないそういう俺が好きって桃香に言われるだけで、どうして胸がいっぱいで、心が満たされていくんだろう。
アイツの口から素の俺を好きだという言葉を聞き、凛とした背中を見つめているだけで心臓が鳴り止まず、桃香の隣にいることで安心している自分にやっと気づいた。
同時に、俺だけが知っている本当の桃香を誰にも見せたくなくなり、将来俺以外と結婚して誰かの物には絶対にしたくない、そう思ったのだ。
だから俺の気持ちを明かさず、桃香の本心も確認しないまま、親の決めた許嫁の立場を死守してきた。
しかしそれが俺の一方的なものだと知ったのは、高校生になり、アベリアと合同で生徒会をやるようになった頃のこと──。