政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「ひとりで行くなら、タクシー使えよ」
「うん。わかった」
「……桃香」
なかなか玄関から出ていかない夏樹に「なに?」と返事をして顔を上げる。
するとチュッと上品な音が鳴り、軽く唇を奪われた。
「なっ」
「もう仲直りしようぜ。何度も言うが、俺たち夫婦なんだから。前向きにやっていくしかないからな」
べつに喧嘩をしていたつもりはない。そう思ってむくれたが、無邪気だが一枚上手の夏樹には敵わず、「わかった」と返事をした。
「じゃあな。いってきます」
「いってらっしゃい」
手を振って出ていく夏樹に向かって振り返した手を、そのまま唇へ持っていく。気まぐれにキスしないでほしいのに、私の胸は逆らえずに甘く疼いた。