政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~


夏樹を見送ると、ラフなシャツワンピースに着替え、必要なものを肩掛けバッグに詰める。

財布、母子手帳に、貧血予防の錠剤。これは先週処方されたが飲むと気分が悪くなるため服用できていない。錠剤が体質に合わないことも今日相談しなければ。

空腹時の不調に耐えながらも食事を制限して体重を落としたが、前回、それもダメだと注意されてしまった。体重も気にしなければならないが、食事はきちんと摂るように、と。もう八方塞がりだ。

結局、一日五回、細切れに、空腹を誤魔化しながら適正な量の食事を摂っている。一日中食事と体重のことばかり考えており、それを夏樹に悟られないようにする毎日が苦しくてたまらない。

気が重くなりながら、産婦人科へと出かける。夏樹にはタクシーを使えと言われたが、なるべく動かなければ太ってしまうためスニーカーを履いて歩きだした。

今日も、体重を指摘されるだろうか。それか食事内容の指導が入るだろうか。それとも、赤ちゃんになにかあると言われたら? 街の喧騒にめまいがし、足取りも重くなる。
< 43 / 113 >

この作品をシェア

pagetop