政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

彼のシュッとした輪郭がはっきりと浮かび上がり、長い睫が何度か瞼とともに揺れている。
目を細め、安堵のものらしき息を吐く夏樹の初めて見る繊細な表情に、見惚れる私は言葉が出てこない。

「お前の友人の、乙羽さんが連絡くれたんだよ。桃香がいきなり倒れて、バッグに入ってた母子手帳にかかりつけの病院が書いてあったから、運んでもらったって」

そうか、私、美砂の前で気を失って……。こんな形ではなく、安定期に入ってからちゃんと報告したかったんだけど。

「美砂は……?」

「さっきまでここにいたけど、外せない用事があるからって帰ったよ。あとでお礼しとけ」

「そっか……」

「で、お前だけど。倒れた理由は貧血だって。俺、錠剤が出てたなんて聞いてないんだが。飲んでるところも見たことねぇし」

それは、わざわざ説明することでもないと思ったからだ。愛のある夫婦なら弱音を吐いたり助けを求めたりするのかもしれないが、私の場合、妊娠生活は妻の務めに過ぎない。
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