政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「……だ、だって。私の体のことだもの」
「なに言ってるんだよ。もっと俺を頼ってくれ。俺はお前の夫なんだぞ」
肩に手を置かれ、控えめに揺すられる。甘く叱られている感覚に、心がほんのりと温かくなった。やはり、私はひとりでは不安だったのだ。うまくやれていると思ったが、夏樹に秘密にしているより、話してしまったほうが何倍も気持ちが楽になる。
「夏樹……」
弱った心と体を彼に預けてしまいたくなったが、姿勢を戻して顔を離した彼の首もとのあのネクタイが目には入り、ハッとした。近づいていた胸板を押し返す。
「な、夏樹、仕事は!?」
「え?」
「商談はどうなったの!?」
頭が冷えていく。真顔でしばらく固まる夏樹と視線がかち合った。
大切な商談が控えていたはず。まさか……。
「ああ、それか。大丈夫、無事に終わったから心配すんな」
歯を見せて笑う夏樹に、私はホッと胸を撫で下ろした。