政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

桃香が俺を頼る素振りをまるで見せないから、桃香と子どもを守りたいという俺の気持ちは宙に浮いている。べつに桃香に悪いところがあるのではなく、こっちにだけ、言いようのない不安があるのだ。

このままじゃダメなのか、それとも問題なく過ごせているのだから静観すべきことなのか、わからない。

妊娠すると女性はいろいろと心と体に変化があると聞いているが、この違和感も、それのひとつだと思っていいのか……?

白い綿のワンピースに、紫のレースのエプロンの紐が結われている彼女の背中を、問いかけるようにじっと見つめた。

少し肉づきがよくなった気がする。ふわふわしていて柔らかそうで、相変わらず、かわいい。
真剣に悩んでいるはずなのに、桃香に触れられなくなってからもう半年になろうとしているため、俺の欲求はいつも静かに燃えていた。

抱きたいが、それをせがむつもりはない。だが、キスしたい。

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