政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「えっ、やぁ……!」
長さのあるスカートの下から手を忍ばせ、太ももを辿った。
妊娠前とまったく同じとは言えない少し油断した肌の感触が、触れ合えなかった時間の変化を表しているようでたまらない。俺も桃香の変化を知りたい。
「桃香……」
「ま、待ってよ、わかってる、溜まってるんだろうなっていうのはわかってるんだけど」
わかってるならさせろよ。そんな自分の心の声が聞こえた。
体をねじって逃げようとする桃香を捕らえ、手をどんどん上に滑らせていく。出来心でその手を腹へと持って行ったとき、桃香は下半身をいじるより、何倍も大きく体が反応した。
温かな存在感のある腹部に、俺は驚愕する。膨らんでいる。変わりないように見えていたのに、もうこんなに。隠していたのか?
もうここには子供がいる。
言葉にならない感情が流れ込んできて、一瞬頭が真っ白になった。
かすかに動いた。桃香の中に、俺の子がいる。
手を離した。熱くなっていた意識はどんどん正気に戻っていく。欲にまかせて手を出そうとするなんてどうかしていた。俺はもう父親だ。
なんだこの感情は。知っていたのに実感がなかったものへ手が届いた気がして、うれしくて、泣きたくなる。