政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
以前貧血で倒れてからずっと、夏樹は土曜に予約するようになった定期検診に付いてきてくれる。
というより、私が意地になってひとりでがんばるのをやめたのだ。お腹の子を心配する権利を、父親である夏樹から奪っていいはずがないと思い直した。
「……大丈夫か? 具合悪そうだな」
運転席の夏樹が、横目でうかがう。
「うん……最近、お腹が張るの。妊娠八か月ならしかたのないことよ。こうしていれば平気」
下腹が引き伸ばされているような痛みと、全身の重さが酷くなっている。
動こうという意思が体に伝わっていかない。
「う……」
「どうしたっ」
「大丈夫、赤ちゃんが動いただけ」
体内から容赦なく臓器へ蹴りが入り、深呼吸を繰り返してやり過ごす。