政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

「どうしようっ……早産になっちゃう……」

「大丈夫だ、落ち着け。ここは病院なんだから心配ないだろ。どうにでもなるって」

「やだやだっ簡単に言わないでよっ」

「ちょっと待ってろ、ナースステーション行って人呼んでくる」

手を握られ、すぐに離される。ついさっき勇気を出して別れを告げたはずの彼の背中が名残惜しくなり、「待って」と声をかける。

「夏樹……行かないで……ここにいて……」

なにを言っているのだろう。ひとりで母親になると決めたのに、振り向く夏樹を引き留めたくてたまらない。いなくならないでほしい。ずっとそばにいて。

「大丈夫だ。ずっとそばにいる」

私の心の声に返事をした夏樹は、目を細めて微笑み、軽やかに引き戸の向こうへと消えていった。

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