綾取る僕ら
二日酔いの朝
目を覚ますと頭がガンガン痛く、直後に吐き気に襲われる。

気持ち悪。
昨日どれだけ飲んだんだろ。

トイレに行こうと上体を起こす。
そこで擦れたもう一つの肌の質感。
斜め下を見下ろす。

染められた髪。
昨日の飲み会の見慣れた服。
この毎日焦がすように見続けた背中。

それが、この、私の部屋のベッドに横たわっている。

え?

ん?

その人はゴロンと寝返りを打つ。

仁さん。

私の好きな人。

え?あれ?
なんでこうなった?

やばい、昨日の飲み会の記憶が二次会の店の乾杯までしかない。

さらに寝返りを打って私の腰にぶつかった仁さんはそこで目を覚ました。

「あれ?スマホ、俺のスマホは?」

寝ぼけた声で、ベッドの上を探す。

やばい、気持ち悪い。

私は口元を押さえながらトイレに駆け込んだ。

ちょっと待って、ちょっと待って。

吐き戻しながら頭を整理する。

なんで私の部屋に仁さんいるの。

え?
さすがにやってないよね?

服は昨日のまま。
ちょっと汚れてる。

せっかくの白い服にケチャップ。
いつ付いたんだろう。

全部吐いたら胃袋の中が何も無くなったのかスッキリした。
けど、グワングワンと襲ってくる頭痛。

コンコン、とトイレのドアをノックされる。

「大丈夫?」

仁さんの声。

「完全に二日酔いです」

そう言いながらトイレットペーパーで口元を拭く。
トイレを出ると、仁さんが優しく笑って立っていた。

手には水の入ったグラス。

「飲みなよ」

そう言って差し出してきたから、素直に受け取って飲む。

はあ、スッキリ。

「授業何限から?」
「3コマからです」
「ああ、じゃあ大丈夫そうだね」

仁さんは伸びをした。

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