綾取る僕ら
見上げると仁さんがいた。

「立てそう?」

そう言って腕を引っ張り上げてくれようとする。
無傷の左足に力を入れて何とか立ち上がったものの、右足は痛くて力が入らない。
赤黒く内出血した足首がみるみる腫れあがってきた。

「病院連れてくよ」

私の足首を見た仁さんがそう言う。

「え、大丈夫です、土曜日だし」
「俺が気になるから行こ」

そう言うと、仁さんは私の脇の下を腕で支えてゆっくり歩きだした。
右足をつかないようにして歩を進める。

麻莉乃さんが絶対に見てる。
怖くて見ることができないけど、空気で分かる。

「大丈夫です、ちょっと冷やせば」

思わず立ち止まった。
こんな状況で二人で行けるわけがない。

「違うの、俺が嫌なの」

仁さんがしっかりと私の目を見て言う。
それからみんなに聞こえるように「病院連れてくわ」と言った。
私は全員の視線を浴びながら、仁さんと駐車場へ向かう。

もちろん、麻莉乃さんの視線がものすごく痛かった。
痛すぎた。
私は振り向けるわけもなく、ただ右足を引きずっていた。
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