綾取る僕ら
電車の中は揺れが気持ちよくて、私の頭がキレイに空っぽになる。

あの車に乗っていたら、私は麻梨乃さんに笑顔を作ってみせて、仁さんに「全くショック受けてないよ」という顔をして、ゴンさんに気付かれないように過ごしていた。
楽しいんだけど、最近は疲れる。

悠人はきっと全て知っている。

全て知っていて、怒ってる。

なのに私を見捨てない。

ガタンゴトンと揺られる中、悠人の硬い体温を感じる。
硬くてぶれない体に、なぜかいつの間にか安心感を感じている。

ああ、甘えたい。

気を許して、誰かに甘えたい。

ドキドキする人と、甘えられる人が一緒だったらいいのに。

私は目を瞑って眠り続けた。
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