綾取る僕ら
ちょっと開けた空間で、突然よさこいが始まる。
みるみる人混みが大きな輪を描くように集まってきた。
それを避けるように、人の流れに逆行するように歩く。

悠人がサクサクと進んでいくのを追いかけるように目でたどる。

早いよ。

人に押されて少しだけその背中を見失いかけた時、たしかに悠人は軽く振り向いた。
一瞬だけ目が合う。
そしてグイッと私の手は強く引かれた。

意外と初めて触れた手は、やっぱり硬かった。
悠人らしくて、絶対に離さないような硬さだった。

その手から、悠人の好きな人が誰なのか伝わってくる。

きっと悠人は私のことが好きだ。

悠人は全然振り返らず、そして全然手も離してくれない。
ギュッと繋がれた手と手が、私は意外と嫌じゃない。

「ねえ」

悠人には聞こえてない。

「ねえ」

やっと私の声に悠人が反応したのは、よさこいの人混みを抜けて少し静かになった頃。

「悠人さ、私のこと好きじゃない?」

悠人は少しだけ動揺した目をしたけど、すぐに口を開いた。

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