綾取る僕ら
「私、別れてほしいだなんて思ってないですよ」
「分かってるよ、だから綾香は関係ないよ、気にしないで」

仁さんの口角が上がる。

もし、初めて会った4月の時点で仁さんに恋人がいなかったら、どうだったんだろう。
付き合ってたんだろうか。
付き合っても長続きしなかったんだろうな。

「悠人とはどうなの」
「ちゃんと好きになれたらいいかなって思ってます」
「いいじゃん」

不思議だけど、今付き合うなら仁さんじゃなくて悠人なんだろうなという確信があった。
もしかしたら、本当に友達になれるのは仁さんの方なのかもしれない。

「もう告られた?」
「られました!じゃ!」

私はまたその場を去るようにペースを上げる。
仁さんに軽く手を振った。

仁さんと麻莉乃さんが別れたら、って何度も何度も考えた夜があったけど、意外と私の心境に何も変化は起きなかった。

仁さんは仁さんだし、それは麻莉乃さんと一緒でもそうでなくても、私の好きになった仁さんだったことに初めて気付く。

体が軽い。

いいペースで私は最後まで走り抜けた。
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