綾取る僕ら
学食
やっと酔いが醒めてきた体でフラフラと大学に向かう。
徒歩でも10分あれば着く。

お昼・・・
お昼を受け付ける胃ではないけど、でもさっきからグルグルなってる。
お腹がぺったんこ。

なにか、豚汁みたいなものが飲みたい。

ふと仁さんを思い出して、胸がキュッとキツくなる。

一晩同じベッドで過ごしてしまった。
でも記憶がない。

なんで何も覚えてないんだろう。

私は仁さんの前で吐いたんだろうか。
どんな介抱をされたんだろう。

とぼとぼ歩いてるうちに大学に着いた。
裏門から学食はすぐ目と鼻の先。

漆黒の壁。
重厚感ある堂々とした佇まいに吸い寄せられるように向かう。

この学食は数年前に造り替えられたばかりで、1,2年からは特に人気だ。
大体この2コマ後のお昼の時間は混み合っている。

私が到着した時には既に満杯だった。

ザッと見渡して座るのは無理そうかなと思う。

生協でインスタント味噌汁でも買おうかな、と人混みに背を向けた時。

「綾香」

私を呼ぶ声がした。
悠人の声だ。

振り向いて人混みから悠人を探す。

と、ヒョイと上がる長い手を見つけた。
助かった。

同じ学科で同じサークルだから一緒にいる時間が多い。
かなり気を遣わなくて楽な人。

「おはよー」

そう言いながら近づく。

「おー、昨日大丈夫だった?」

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