◇君恋◇
「でも気持ち良かったんだろ?」
その質問に私は否定することはできず
コクンおとなしく首を縦に振った。
「素直なやつ」
「龍也が聞いたんじゃん」
私はまた頬を膨らませる。
「すねんなよ…」
そんな私を見てか龍也が私の頭をポンポンとたたく。
そんなことされたら許すしかないじゃん。
「すねてない。それより行こうよ」
「はいはい」
再び私たちは歩き始めた。
出口にたどり着くまでに何度私は龍也を困らせただろう。
ホラーハウスを出た時の龍也の顔は少し疲れていたような気がした。
私は少し心配になったので
「そこで休んでて。私何か飲み物買ってくるから」
ベンチを指差しながら言う。
「すまない」
「コーヒーでいいの?」
「あぁ。たのむ…」
「じゃあ行ってくるね」
私はベンチに背を向け少し離れた自動販売機へと向かった。