◇君恋◇



『何してるんですか?』



不意に聞き覚えのある声が聞こえた。

私はその声にホッとし胸をなでおろす。



「なんだおまえ?」

「僕はその人の彼氏です」



その迷いのない言葉に私は

少し顔を赤くした。



「なーんだ男かよ」



そう言うと男は私の手を離し。

逃げるようにその場を離れた。

2人きりになり龍也は私に近づいた。



「おまえ馬鹿だろ?」



私はその言葉にドキッときた。



もしかして怒ってる?

怒ってるよねこの感じ;



どうすればいいかわからなくて私は

ワンピースの裾をぐっとつかんだ。



「ほら、大丈夫か?」



固まったまま動かない私に龍也は聞く。

大丈夫かって聞かれると大丈夫ではない。

さっきからなかなか震えが止まらないんだもん。

もし龍也がこなかったらって考えるだけで

全身震えて今にも泣き出しそう。





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