◇君恋◇
「ほら着くぞ」
「うん」
私は差し出された手を握り観覧車から降りた。
龍也はいつ連絡したのか遊園地から出るとすぐ前には
高杉さんの乗った黒いベンツが待っていた。
車に乗る時に龍也の手がぱっと離れる。
車に乗るからしょうがないことなんだけど
ちょっと名残惜しい気がした。
「疲れたか?」
私は首を左右に振りった。
「龍也は大丈夫?」
「あぁ…」
多分嘘だと思う。
だって朝よりずいぶん表情が暗い気がしたから。
私に気を使わせないように言ったんだと思う。
「そっか…」
私は気づかないふりをしてそう言った。
そしてなんとなく龍也の手に自分の手を近づけた。
どうしてだかわからないけど
触れたくてしょうがなかったから。
そのまま私の手は龍也の手に軽く触れた。
龍也は少しびくっとしたけど
私の手が触れると何も言わずに手を握ってくれた。