◇君恋◇
「それにしてもわざわざ会いにきてもらってごめんなさいねー」
お母さんはお茶を出しながら言う。
「いえいえ。是非お会いしたいと思っていたので。さすが明さんのお母様ですね。とてもお綺麗で」
今日の龍也はなんだろう。
学校モードに似てるけどなんか違う感じがする。
いつも以上に紳士だ。
しかもお母さんにお綺麗だなんて…
本気で思っているのだろうか?
「あらま…龍也くんは誉めるのが上手なのね」
お母さんは口に手を当てながら軽く微笑む。
私もそれにつられて口を緩めた。
良かった。
お母さんと龍也なら仲良くなれそう。
問題は…
私はチラッとお兄ちゃんの顔を見た。
厳しい眼差しで龍也を見ている。
本当に…
シスコンなんだから!
「お兄ちゃん!いつまでも睨まないでよ」
「別に睨んでない!俺はもともとこういう顔だ!」
「何言ってるの!子供じゃないんだからもっと大人らしくしなさい!」
久しぶりに私はお兄ちゃんを怒った。
お兄ちゃんも黙り込み静かな時間が流れる。
お母さんと龍也も少し気まずそうな顔をしていた。