◇君恋◇
「まぁ明落ち着いて」
龍也が私をなだめる。
私は軽く深呼吸をしてソファーに座った。
「智も久しぶりに明が帰ってきたから嬉しいのよ。龍也くんごめんなさいね」
「いえいえ。喧嘩するほど仲がいいといいますから」
龍也はそう言いながらクスッと笑った。
絶対龍也…
馬鹿にしてるよね?
「ほらお兄ちゃんも大人らしくしなさい」
「はいはい」
お兄ちゃんも大人しくなり龍也を睨むこともなくなった。
「龍也くんのお父様は何をやってらっしゃるの?」
お母さんがふと聞いたことだった。
そういえば私もお金持ちなのはわかるけど
何の仕事をしているかはわからない。
「まぁ、貿易関係です」
「そうなの…花園学園とは何かあるの?名字が一緒だけれど」
「一応理事長ということになっています。今は海外にいるのでめったに顔は出しませんが」
理事長?!
私は思わず声を出しそうになった。
じゃあ将来龍也が理事長?
私は龍也くんが理事長をやっている姿をなんとなく想像してみた。
うん…
似合わない…
「じゃあ将来はあとを継いで?」
「将来はそうしたいと考えています」
「そうなの~」
龍也って若いのに将来のことちゃんと考えてるんだ。
私はなんだか急に龍也が遠く思えた。