◇君恋◇



「まぁ明落ち着いて」



龍也が私をなだめる。

私は軽く深呼吸をしてソファーに座った。



「智も久しぶりに明が帰ってきたから嬉しいのよ。龍也くんごめんなさいね」

「いえいえ。喧嘩するほど仲がいいといいますから」



龍也はそう言いながらクスッと笑った。



絶対龍也…

馬鹿にしてるよね?



「ほらお兄ちゃんも大人らしくしなさい」

「はいはい」



お兄ちゃんも大人しくなり龍也を睨むこともなくなった。



「龍也くんのお父様は何をやってらっしゃるの?」



お母さんがふと聞いたことだった。

そういえば私もお金持ちなのはわかるけど

何の仕事をしているかはわからない。



「まぁ、貿易関係です」

「そうなの…花園学園とは何かあるの?名字が一緒だけれど」

「一応理事長ということになっています。今は海外にいるのでめったに顔は出しませんが」



理事長?!

私は思わず声を出しそうになった。

じゃあ将来龍也が理事長?



私は龍也くんが理事長をやっている姿をなんとなく想像してみた。



うん…

似合わない…



「じゃあ将来はあとを継いで?」

「将来はそうしたいと考えています」

「そうなの~」



龍也って若いのに将来のことちゃんと考えてるんだ。



私はなんだか急に龍也が遠く思えた。





< 121 / 131 >

この作品をシェア

pagetop