◇君恋◇
そうだよ。
龍也は所詮はお金持ち。
将来はもっとお金持ちのお嬢様と結婚しなきゃいけないんだし
私はすぐにおさらばだ。
離れたくないけど
離れなくちゃいけないんだ。
「明?」
「うん?」
私は一気に自分の世界から離された。
あんなことを考えたあとだから
どんな顔をすればいいかわからない。
「そろそろ帰るか」
「う、うん」
私はできるだけ笑って返事をした。
龍也には心配をかけたくないから。
「では失礼します」
「じゃあね、お母さんお兄ちゃん。お父さんによろしく」
「元気だって伝えておくは」
「め~い~」
再びお兄ちゃんがぐずり出すが
それをお母さんがなだめる。
私はなんだか急に懐かしい気分になった。
さっきまで感じなかった気持ち。
多分、今の私の心の中が影響してるんだと思う。
私はなるべくさっきのことは考えないことにした。
「またね」
そして私たちは龍也の家へと向かった。