◇君恋◇
なんで?
なんでそんな顔するの?
龍也には綾女さんって婚約者がいて
守らないといけない人がいるんじゃない。
そんな顔しないでよ…
「ごめん…大丈夫だから。行こう」
私は龍也の顔を見ないままそう答え一人で車に向かった。
龍也は何も言わずに私の後ろをついてくる。
私何してるんだろ?
龍也は悪くないのに…
好きになった私が悪いんだ。
そう考えると今まで龍也が言ったことや
してくれたことは全部嘘になる。
考えたくないけどそれが現実なんだからしょうがない。
私は溢れそうになった涙を必死にこらえた。
そして龍也も何も言わず
車に乗り込み私の隣に座った。
静かに時間だけが流れる。
やっぱり、綾女さんのことは話してくれないんだ?
話してくれてもいいのに
龍也は口を開こうとはしない。