死にたがりな君と、恋をはじめる
言うって決めたのは私からなのに、いざというときに勇気が出ないのは、本当に情けない。
勇気を出したいと、言うのは簡単だけど、いざ実践するのは難しいんだ。
――……それでも。私は言わなければならない。
『言いたい』……そう、思ってしまったから。
私は胸を押さえて大きく深呼吸すると、誠おばさんをまっすぐに見つめた。
「……誠おばさん。あのさ」
「え?」
慎重に切り出すと、誠おばさんはきょとんと首を傾げた。
「どうしたの、奈月ちゃん。真剣な顔して」
「あの、さ……誠おばさん。私……誠おばさんに話したいことがあるの」
いよいよ話し出すと、心臓が口から出そうなほど緊張してしまう。
震えた両手をぎゅうっと握りしめて誠おばさんの言葉を待つ。
私が静かな声でそう言うと、誠おばさんは瞬きを繰り返してしばらく沈黙しそれから小さく頷いた。
「もちろん、聞くよ? 私が奈月ちゃんの話を無視なんてするわけないのに……。急にどうしたの?」
「まぁ、 ちょっとね……真面目な話だから。まずはリビングに移動したいな」
玄関で話せるほど軽い話ではないから、私は顎で奥の扉を指し示した。
リビングに続くドアを開けて、来ていた上着をハンガーにかけ、ハンガーラックにつるす。
それから椅子に座ると一つ、ため息をついた。
誠おばさんに目を向けると、誠おばさんは緊張した面持ちでこちらを見返した。
「――それで、奈月ちゃん。話って、何?」
「……うん」
決心したとしても口に出すのは難しくて、私は再び息をついた。
「……あのね。誠おばさん。この間私さ。帰ってくるの遅かったでしょ?」
「え、この間?」
誠おばさんは遠くを見るかのような目をしてしばらく思案し、それからポンっと両手を打ち鳴らした。
「あぁ、私が心配しすぎで警察に連絡しようとした時のこと?」
「その節はどうも迷惑をかけてしまってすみませんでした……」