死にたがりな君と、恋をはじめる
「本当に心配したんだよ?」という誠おばさんに、両手を合わせて頭を下げた。
私のその仕草に誠おばさんは緊張が解けたように眉を下げて笑う。
「いやいや。謝ることじゃないよ~。よく考えてみると高校生って人生の中で一番楽しい時だもん。私も学生の頃今日の奈月ちゃんみたいに友達と遊んで、遅くに帰って怒られたりとかたくさんあったしね」
「っ……そ、そうなんだ……誠おばさんの学生時代は結構やんちゃだったり?」
楽しそうにそう語る誠おばさんに、心臓がどきんと波打った。
それでも動揺を悟らせぬように必死に笑って、相槌を打つ。
……胸が、痛い。
笑顔を作って取り繕っても、心臓は今も罪悪感に震えていて、私は机の下でスカートを握りしめた。
私は、本当は友達と呼べる人なんていなくて、今までだって、私は誠おばさんにたくさんの嘘を重ねた。
その事実が信じられないほど胸を締め付けて、それでも私は言わなくてはならない。
嘘を、全部包み隠さず白状して、それから許しを求めなければならない。
そう私は決めたのだから。
今日何度目かもうわからないため息をつき、肺を振り絞って声をひねり出した。
「……ま、誠おばさん。私……ね」
「え?」
誠おばさんがこちらを見る。
……いつもは安心できるそのまなざしが。
私を少しも疑っていないかのようなその瞳の輝きが。
――……今は、とても苦しい。
「私……本当は友達なんて、いないの」
「……え?」