死にたがりな君と、恋をはじめる
誠おばさんが頭を撫でてくれる優しい手つきが気持ち良い。
誠おばさんがふいに私の肩をつかんで、私の顔をじっと真剣な顔で見つめた。
「……ねぇ。奈月ちゃん。私じゃ奈月ちゃんの家族になれない?」
「っ……」
家族になってほしいなんて、そんなあったかい言葉を貰ったのは、初めてで。
胸に嬉しさがじわじわと広がっていって、ハッと息を吐いた。
油断していた涙腺が緩んで、唇を噛み締めた。
頬が熱を持って、目じりに涙が浮かぶ。
たまった雫がぽろりと頬を伝って、ぽたりと床に丸い跡をつけた。
私は目じりにたまった涙をそっとぬぐい、唇の力を抜いた。
「なんだか……誠おばさん、プロポ―ズみたい」
「いやいや、プロポーズ『みたい』じゃなくて、プロポーズだからね? 奈月ちゃんは、私が相手は……嫌?」
からかうように言うと、誠おばさんはなお真剣な眼差しでこちらを見つめる。
嫌、なんて……そんなわけがないよ。
フッと唇とほころばせて、誠おばさんに満面の笑みを向けた。
だって私は、誠おばさんが大好きなんだから。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
震える唇でなんとかそう言うと、誠おばさんはぱっと顔を輝かせて。
あたたかなその腕でぎゅうっと強く抱きしめられて、私は目じりから一粒涙をこぼした。
「私……知らなかった。人間って本当にうれし泣きができるんだね」
ほろりと小さく呟くと、誠おばさんは抱きしめたままふふと笑い声を漏らした。
「そうだね……私も泣きそうだ」