死にたがりな君と、恋をはじめる
ただでさえ寝起きは悪いほうなのに、こいつの声で起きるのは、本当に気分が悪い。
重い体を引きずるようにして、のそりとベッドから起き上がる。
『眠そうだねー。奈月って朝弱い系?』
「……うん」
ねむ……。
三度あくびをしつつなんとか返事をする。
すると、レイは、目を丸くして、それからあははっと面白そうに笑った。
『うわー、声もかすれてる。昨日夜更かししてたからでしょ』
「・・・うっさ」
『え、ひどい』
つい、本音を漏らすと、レイは少しショックを受けた様子で固まった。
その後もぐちぐちと恨み言を言うレイをしばらく放置していたんだけど、
ついに我慢の限界で、触れられないことも忘れて小突つこうとしてしまった。
……いや、冗談抜きで、本当にうるさいな。
朝は元気ないのが普通でしょ……。
逆にレイが元気すぎて怖い。
……というか、幽霊って、睡眠をとるんだろうか。
のっそのっそと階段を下りる私に、今度は静かに、レイがふわ~とついて来る。
「あ、奈月ちゃん。おはよう。今日も相変わらず眠そうだねー」
私の姿に気が付いた誠おばさんが、にこりと太陽のように明るい笑顔を浮かべた。
……ちなみにおばさんは根っからの朝型である。
「おはよ……誠おばさん……けほっ」
のどが痛くてせき込むと、誠おばさんはあらあらと頬に手を当てた。
「奈月ちゃん、大丈夫っ? 声かっすかすじゃない、風邪かな。昨日夜遅くまで起きていたからね~」