死にたがりな君と、恋をはじめる
ずっと学校に忍び込む方法を考えて、考えて、探して、ようやく見つけた抜け道。
学校をぐるっと取り囲む塀の、
山に面した部分が老朽化で破れていて、今日はそこから忍び込んだ。
今まで、何度も脳内で、今日のことをシミュレーションしていた。
私は慣れた様子でフェンスを乗り越える。
ふぅっと息を吐いた。
……よし、ここまではシュミレーション通り。
問題はここからだ。
……何度も何度も死のうとして、フェンスを乗り越えた。
来るのは簡単なのに、いざとなると、毎回足がすくんでしまう。
……死んだら、どうなるんだろう。
足を踏み出そうとすると、色々なことが脳裏に過ぎる。
もし、死んでも楽になれなかったら?
今よりもつらい日々が待っていたとしたら?
……私が死んだら、この世のみんなはどう思うのだろう?
そんなことをしてしまって、ふっと笑って首を横に振った。
喜ぶか、何も感じない人ばかりで、
悲しんでくれる人なんて、いないに決まっている。
それに、そんなこと、私には関係ない。
色々な事を考えて、なんにも行動に移せない、
そんな臆病な私とも、今日でお別れだ。
ここまで来てもたもたしていて、警備員さんに見つかったら大変だ。