死にたがりな君と、恋をはじめる
私が死にたい本当の理由
「は、なんであんたがここに……」
そう戸惑いの声を上げる彼女の顔は田中友花そっくりで、私は無意識に身構えて警戒してしまう。
その子は信じられないとばかりにこちらを睨んでくるので、彼女が田中であることは間違いないようだ。
田中はふぅっとため息をつくと、ニコリとかわいらしい笑顔を浮かべた。
「どうもこうも……遊園地に来てたとこだけど」
「そっか、そうだよね~。遊園地って色々遊べる場所あるし、楽しいよね~」
田中は張り付けたエンジェルスマイルを浮かべ、こちらに向き直った。
「ところで、佐川ちゃんはなんで迷子センターなんかにいるの~? もしかして、迷子?」
「はぁ? 違うにきまってるでしょ?」
ニコリとした笑顔とチクリとした嫌味。その攻撃に、私は眉間にしわを寄せて睨みつけた。
と、気が付く。
田中がここにこのタイミングで来たということは、もしかして……。
「そういえば、友馬くんって田中の弟?」
「……え、友馬って……。まさか」
友馬君の名前を出すと田中は少し呆然として、それから唇を噛んだ。
田中は友馬君を保護したのが私だと、今さら気が付いたようだ。
「友馬を保護してくれた人って、まさか、佐川ちゃん?」
「そうだよ?」
さっと顔が強張ったのを確認して、私はふっと笑った。
「あれ? 弟の恩人様にそんな怖い顔して、どうしたの? 恩人様にはちゃんと敬意をもってお礼するべきじゃない?」
「……最悪」
私の煽りに、田中は笑みを崩して低く呟いた。