死にたがりな君と、恋をはじめる
「今のところ死にたいとは思ってないよ」
『え……』
少し微笑んでそう言うとレイは弧の字に眉を上げて、それからフッと表情を和らげた。
『そっか……そっかぁ……』
嬉しそうに呟いて、それから緩んだ口元を手で隠す。
その仕草を見て私はつられて微笑んだ。
電車の窓の外はもう赤い空が陰り始めていて、だんだんと変化する空の色を、私はじっと見つめた。
……本当は今日、遊園地に来るつもりはなくて。
無理やり連れてこられて最初は散々だったけど……結果として、来てよかったな。
友馬君と会えて、それから田中の家庭内環境について知れて。
そして何よりも、私が死にたかった本当の理由が知れて。
今までより前向きになれた気がする。
私……少しは成長できたかな。
今日の出来事を思い返してホッと息を吐いた。
電車の微かな揺れが心地よくて、私はシートに身を任せ、目をそっと閉じる。
……レイが座る右側が何だか温かくて、私はこっそりと唇の端を微笑ませた。